禁止薬物リストは毎年毎年更新されています。インターネット検索を行うと「えっ!」と思われるものも該当します。「いたちごっこ」と例えられるように新たな薬物が次々と登場するからで、ある意味では「脱法ドラッグ」と同じような様相を呈しています。現在では「劇的効果を期待して使用する行為」自体がドーピング行為と認定されます。
では「疲労回復」のための市販ドリンク剤はどうなのでしょうか、また「薬膳料理」などの食事メニューは大丈夫なのでしょうか?
結論的に言うといわゆる「サプリメント」の15%には禁止薬物が含まれており特定の「漢方薬」にも禁止物質が含まれていると指摘されています。漢方薬系のかぜ薬のうっかり使用でドーピング違反を問われる選手もいます。チームに帯同する医師の重要な仕事が治療薬や摂取する食品のチェックなのだそうです。
「禁止」の重要な根拠は「副作用」の存在です。1)興奮剤:正常な判断力を奪いアクシデントをまねく、2)麻薬性鎮痛剤:中毒症や依存症、3)蛋白同化ステロイド(筋肉増強剤):黄疸や肝機能障害、女性の男性化や男性の女性化、4)利尿剤( ドーピング痕跡の隠蔽):重度の脱水症、5)血液ドーピング(自分の血液の再注入で持久力増):感染症、6)βブロッカー(標的競技での心拍数抑制 ):心拍・血圧のトラブル、などなどです。先日カナダで「大麻」が合法化されましたがスポーツ競技ではドーピングとなります。
効果的トレーニングのためには「運動」「栄養」「休養」のマネジメントが重要です。持久力トレーニング後の炭水化物や筋力トレーニング後のタンパク質摂取が重要であることはよく知られています。問題はトレーニングとその回復過程に入り込む通常の食品由来以外の「サプリメント」が「何者」なのかということとなります。
ドーピングが不正行為である根拠のひとつは「副作用」とともに、ほぼ同じトレーニングを行ったアスリート間の「不公正性」にもあるものと思います。
しかし、トレーニング環境も経済的基盤がなくては十分に構築できません。日本の五輪本番の切り札「マルチサポートハウス」は期間中だけで5億円以上の財政的支援が必要です。これは当然「違反」ではありませんが経済的に厳しい国のチームから見ると「何となくフェアでない!?」のかもしれないのです。ロシアのドーピングの背景には、2010年バンクーバー冬季五輪でのロシアチームの不振にプーチン大統領が怒って檄を飛ばし、競技団体が「最も安価な選手強化システム」として組織的ドーピングを行ったのではないか考えられています。