運動をした時に生ずる「乳酸」は、筋肉のグリコーゲンがエネルギーとして利用される際に、一定以上の強度になると酸素不足となり処理しきれずに「乳酸」という形で筋に蓄積し「きつい」という感覚を生じさせます。この筋から血液に出てくる乳酸を測定するのが「血中乳酸値」で運動強度の指標になります。
遅筋線維では筋細胞内のミトコンドリアという有酸素的エネルギー生産機構が豊富で乳酸処理能力が高いのですがスピードはあまり出せません。速筋線維では大きな力を発揮できるのですが、乳酸が処理しきれずに蓄積するので「激しい運動後」は血中乳酸値が高まってきます。
有名な「スロージョギング」は、血中乳酸値があまり上がらない速度(60%強度・・単位は濃度2.3ミリモル/l)以下で走るので「きつくない」ので継続して走ることが可能となります。80%強度(単位は4ミリモル/l)を超えると、乳酸処理能力が限界を超え、血中乳酸値がどんどん上がり始めで「きつく」なってランニングが継続できなくなります(ゴールが見えたラストスパートはこれで、ゴール後の”ゼイゼイハーハー“はそのツケを払っている)。
血中乳酸濃度の測定は、ランニング後に耳朶や指先に一瞬「チクリ」と針を刺し、米粒程度の血液量を簡易測定器で計測します。ただし試薬などで経費が1回300円ほどかかりますので、一般の方は何回も測定ができません。
そこで、ランニング速度を徐々に上げる「ビルドアップ走」を行い、心拍数と血中乳酸濃度の関係を数回測定しておいて、通常の練習では心拍数を目安に60%強度と80%強度を推定してトレーニングメニューを決めます。80%強度相当の心拍数が同じ(例えば155拍/分)でも、トレーニングを継続すると、㌔あたりのタイムが最初10分で155拍/分であったものが、㌔8分になり㌔7分になっても心拍数が変わらなければ、持久性トレーニングは上手くいっていることとなります。
厳密な「心拍数トレーニング」を行うには、一度血中乳酸濃度と心拍数の関係を測定することが必要です。(続く)