2018年 7月 の投稿一覧

「血中乳酸値」って何ですか?

運動をした時に生ずる「乳酸」は、筋肉のグリコーゲンがエネルギーとして利用される際に、一定以上の強度になると酸素不足となり処理しきれずに「乳酸」という形で筋に蓄積し「きつい」という感覚を生じさせます。この筋から血液に出てくる乳酸を測定するのが「血中乳酸値」で運動強度の指標になります。
遅筋線維では筋細胞内のミトコンドリアという有酸素的エネルギー生産機構が豊富で乳酸処理能力が高いのですがスピードはあまり出せません。速筋線維では大きな力を発揮できるのですが、乳酸が処理しきれずに蓄積するので「激しい運動後」は血中乳酸値が高まってきます。
有名な「スロージョギング」は、血中乳酸値があまり上がらない速度(60%強度・・単位は濃度2.3ミリモル/l)以下で走るので「きつくない」ので継続して走ることが可能となります。80%強度(単位は4ミリモル/l)を超えると、乳酸処理能力が限界を超え、血中乳酸値がどんどん上がり始めで「きつく」なってランニングが継続できなくなります(ゴールが見えたラストスパートはこれで、ゴール後の”ゼイゼイハーハー“はそのツケを払っている)。

血中乳酸濃度の測定は、ランニング後に耳朶や指先に一瞬「チクリ」と針を刺し、米粒程度の血液量を簡易測定器で計測します。ただし試薬などで経費が1回300円ほどかかりますので、一般の方は何回も測定ができません。
そこで、ランニング速度を徐々に上げる「ビルドアップ走」を行い、心拍数と血中乳酸濃度の関係を数回測定しておいて、通常の練習では心拍数を目安に60%強度と80%強度を推定してトレーニングメニューを決めます。80%強度相当の心拍数が同じ(例えば155拍/分)でも、トレーニングを継続すると、㌔あたりのタイムが最初10分で155拍/分であったものが、㌔8分になり㌔7分になっても心拍数が変わらなければ、持久性トレーニングは上手くいっていることとなります。
厳密な「心拍数トレーニング」を行うには、一度血中乳酸濃度と心拍数の関係を測定することが必要です。(続く)

 

心拍数からわかること

最近は安価な「スマートウォッチ」でも、緑色ダイオードから光学的に心拍数を測定できるようになりました。
手首の血管に心拍にあわせて血液が流れると「ヘモグロビン」が光を吸収します。この変化の濃淡の時間間隔を読み取って計算して1分当たりの心拍数を表示する原理です。ですから寒いときに手首の血管が収縮して血流が悪くなると精度が悪くなります。胸部につけた送信機タイプのものは、心電図と同じ電気信号を処理しますので精度が高いのですが「煩わしい」のです。
心拍数は、運動の継続による酸素消費量の増大と、自律神経(交感神経)系の活動に反応して上昇します。人前でスピーチをする直前に「ドキドキ」するのは後者の影響です。まさに「こころの臓器」なのです。
「心拍トレーニング」は、運動強度の推定を心拍数から行う方法で、最大強度の60%と80%が持久性トレーニングのガイドラインとなります。つまりAさんとBさんがレースの10Kmを、90分と60分で走れるとすると、1キロ10分の同じスピードで練習していても「運動強度」と「トレーニング効果」が異なることとなります。特に80%強度の心拍数の時にどのくらい速く走っていられるかでレースのパフォーマンスが決まるといわれています。そして、80%強度でのランニングスピードを改善するには、何故か60%強度以下の練習量が大きな影響を与えます。つまり10Km90分で走る方では1キロ10分のスピードで走っていては運動強度が高すぎることとなります。まさに過ぎたるは及ばざるがごとしなのです。
では、具体的にはどのようにして計算するのでしょうか・・
著名な方法は「心拍数上昇のキャパシティ」から推定するもので、じっとしている時の「安静時心拍数」と「運動時最高心拍数」が基準となります。最高心拍数と安静時心拍数の差を「100%」として60%や80%を推定するのです。ただ「運動時最高心拍数」を求めることはリスクを伴いますので「推定最高心拍数」として「220‐年齢」で産出する方法が「カルボーネン法」といわれるやり方です。
40歳の方で、安静時心拍数が60拍/分の場合は、推定最高心拍数は「220-40=180拍/分」となり、60%強度は、安静時60拍/分に、(180-60)=120拍/分×60%の72拍/分を加えた132拍/分ということとなります。
60歳の方で、安静時心拍数が70拍/分であれば、60%強度は、安静時70拍/分に(160-70)=90拍/分×60%を加えた124拍/分です。(続く)