昨年12月に、世界陸連(WA)がいわゆる「厚底シューズ」に関する規定を改定しました。有効期限は2021年8月まで(五輪後)です。
 全体的なポイントは、①市販されていて規則に準じていてメーカーがWAに申請登録していること、②市販されているものを足のケガなどを防ぐために改造したもの(外反母趾への対応など)、③市販目的でテストシューズとして開発されたものはWAに申請すること・・が使用可能で、④個人のためだけ作られた市販されていない「唯一無二」のシューズは使用禁止となります。
 また、トラックレースでは、800m以下の距離は20mm以下、800m以上のレースでは25mm以下で、例外的に競歩競技だけが40mm以下となっています。もしも役員に黙ってレースの時に取り換えて25mm以上の厚さのシューズで走ると「失格」になるばかりではなくそのレース自体が無効になり「新記録も無効」となる可能性があります。また、道路競争は従来通り40mm以下となっています。
 本年3月のランニング学会で東海大学の丹治史弥先生が、ランニングシューズとランニングエコノミー(効率)に関するプロジェクトの報告を行い、同じ40㎜厚のシューズでもカーボンプレートを内蔵したモデルでは平均6%近くランニング効率が高いこととともに選手によってはランニング効率が低下することを指摘しいています。さらにカーボンプレート内蔵の厚底シューズでは「最大スピード時の血中乳酸濃度が高い」という興味ある結果を示しました。最大スピード時の血中乳酸濃度が高いということは「速筋系線維が利用されている」ということで、ランニングスキルを変えている可能性があるのです。変わったランニングスキルがその選手とマッチしていれば結果としてのパフォーマンスが向上するということのようです。また、踵接地気味の選手や足首や膝をうまく使っている選手では逆に恩恵を受けにくいようなのです。
 結論はまだはっきりしないのですが、厚底だけ(当然シューズの重量が増えますのでエネルギーは必要となります)ではランニング効率はあまり変わらず、カーボンプレートの撓みをフラット接地やフォアフット接地ではうまく利用することができる選手にはランニング効率改善に貢献しているようなのです。
 因みに陸上競技連盟未登録のランナーはどんなシューズを履いてもかまいません。30Km地点でシューズ交換という必殺技も可能です。実はロードレースでのシューズチェックをどうやって行うのかは陸上競技連盟としても頭の痛いところです。一般の競技会では「選手召集所」でチェックできるのですが1万人を超えるレースでは「陸連登録者」だけをスタート前にチェックすることはできないので、入賞者だけゴール後シューズチェックをするしか方法がないようです。