同じ同じ動作を繰り返しているとパフォーマンスが低下してきます
この時に休憩をはさむのですが、ただ休んでいるのではなく「別の運動」を行うとパフォーマンスがより回復するという現象があります
これは1930年代に旧ソ連のセーチェノフ(パブロフの先生にあたるらしい)が提唱した「積極的休息(セーチェノフ現象ともいわれる?)」の概念です
図はクレストフニコフの「スポーツの生理学」(1978)で引用されたデータです
右腕での作業10分後に再び右腕を用いるよりは、左腕の作業をはさんだほうが回復状態が良いというデータです
クレストフニコフは「長い単調な運動は中枢神経系に疲労の増大をもたらし、運動感覚は失われる。運動を交替したり、諸運動の相互関係をよくみて、正しい一貫性のある運動を選択することにより、大脳皮質における運動能力の高い水準を確保することができる。」と述べています
これは、以前指摘した「筋の3×3システム」の図でいうと、「超瞬発系筋線維とハイパワー:クレアチンリン酸系の高出力システム」が「中枢性の抑制」を受けやすいということを意味しています
私たちの実験でも、筋疲労で筋電図の速筋系成分が減少するのですが、ストレッチングやアイシング、他の筋での作業を実施するということで、再び速筋系成分が回復することがわかっています
実は、「乳酸の再利用」のところでも指摘した「動作モードの変更によるパフォーマンスの維持」も、このメカニズムと類似したものではないかと考えています
ただ、この「積極的休息」の概念は、その後拡大解釈が拡がり「休息してまた同じことを続ける」よりも「他のことをやったほうが効率が良い」ということで、身体作業だけではなく精神作業にまで、あまり科学的根拠もなく拡大適用されてきているように思います
この概念はあくまでも「脳‐神経系」と「身体系」との枠組みの中で論じられる現象であって、科学的に見えそうな「こじつけ」の乱用は厳に慎むべきだと思うのです