市民ランナーの方から「走っていて ”カクッ” と脚の力が抜けて転びそうになるのですが・・?」という質問を受けます。私も先日10Kmランニング中に足関節で2~3回経験しました。変な痛みを感じだした途端に ”カクッ” と力が抜けます。
 2017年の第29回ランニング学会でも筑波大学の黒坂先生たちが「長距離ランナーにおける突発的な下肢の機能不全~いわゆる「脚抜け症状」について~」で、支持脚の股関節に関わる中殿筋や内転筋で筋活動の低下がみられたことを報告し、閉鎖神経や坐骨神経が関与している可能性を報告しています。
 私の個人的見解ですが、これには「折り畳み反射」の発生による「伸展反射(支持脚の保持)」の抑制が関わっているのではないかと思うのです(下図)。


 左はいわゆる「伸張反射」で、二頭筋(力こぶの筋)が瞬間的に引っ張られると「筋紡錘」というセンサーからの求心性Ⅰa群線維が脊髄に信号を送り、二頭筋の急速な屈曲と三頭筋の伸展の抑制を引き起こして筋長を維持します。下肢では大腿四頭筋の伸展とハムストリングスの抑制を引き起こして支持脚を支えます。
 ところが「折り畳み反射」ではより骨の付着部に近い「腱紡錘」センサーからの求心性Ⅰb群線維が脊髄に信号を送ります。腱紡錘が伸展されるということは筋が伸びきっていて筋断裂の恐れが高くなるので二頭筋の「伸張反射」を抑制して三頭筋の伸展を誘発します(格闘技などでの関節固め技もこのメカニズム?)。下肢で起これば支持動作の抑制を誘発して  ”カクッ” と力が抜ける可能性が高くなります。
 走行距離が長くなって脚筋の疲労が進行すると筋長の短縮が起こります。筋長が短縮するということは「腱紡錘」からのⅠb群線維の入力が増加する可能性が高くそのことが「折り畳み反射」を誘発し「伸張反射による姿勢維持」を抑制しているのではないのかと考えています。これを予防するためにはストレッチングやマッサージなどで内転筋やハムストリングスの筋長を回復させることが重要となるように思います。