「最近の子ども」は、過度な競争環境下での運動不足と精神的ストレスの増加などの健康上の問題を抱えています。
かつては、学校帰りに河原やお寺の境内、神社などの「秘密基地」で「みちくさ」ができたのですが、最近は学校の広域統合でのスクールバス導入や不審者への対応などから、なかなか運動遊びができる環境がなくなってきています。
そこでスイミングやサッカーなどのスクール通いが盛んになり、またトップクラスの選手を目指す「早期教育」ということで子どものスポーツ活動が注目されてきています。
ここで問題になるのが「勝利至上主義」に代表される「スポーツの歪み」の弊害です。勝つことをすべての前提に、子どもにも指導者にも「管理主義」が横行し、フェアプレイやリスペクトといったスポーツ本来の重要な価値観が置き去りにされるのです。
テニスのジュニア大会のセルフジャッジのシーンで、コーチが「相手のオンラインショット(最高のショット)は”アウト”とジャッジしろ!」という信じがたい指示を出した例があると聞きます。最近の大学アメリカンフットボール部の事件も、この「勝利至上主義」と「管理主義」が根底にあります。
子どもの心とからだにとっての大きな問題は、勝つためのハードトレーニングと称して、オーバートレーニングによるスポーツ障害を招いてしまうことです。スポーツで輝いていた子どもたちが、指導者の無知と無理でスポーツ障害を発症して大好きなスポーツができなくなる・・これはとても重大な「子どもの権利侵害」です。
スポーツトレーニングは一種のストレスですので一定のレベルを超えると障害を発症します。
図はスポーツ障害の発症をモデル化したもので、例えば練習の「強度」「時間」「頻度(週何回練習するか)」の三要素を考慮すればスポーツ障害は予防できるのです。つまり「トレーニング計画の妥当性」こそが最も重要で、指導者の根拠のない経験やカン、その日の気分などに依存していては効果的なトレーニングはできず、子どもの心とからだに大きな問題を残してしまいます。また、練習後のストレッチなどの身体のケアもとても重要ですが、練習を終えてすぐ塾に行ったりして整理運動(逆の順では準備運動も)ができなかったり、練習後の栄養摂取が不適切であることも問題です。
また、子どもの発達段階には10歳までの「神経系」、11~14歳までの「持久系」そして15歳以降の「パワー系」といった発達順序があり、かつ個人個人の発達段階に最大±3年の違いがあることも指摘されています。つまり「発達段階の推定」が非常に重要になってくるのです(続く)。