・週末のテニスや野球は「心のリフレッシュ」にとって必要(やめられない)なものなのですが、それだけではメタボリック・シンドロームなどの「基礎疾患」を防ぐことはできないようです。単純に考えると、365日の ”基礎代謝+活動代謝” という「消費カロリー」と食事で摂取される「摂取カロリー」とのバランスで増量や減量は決まるのですが、日常の「生活習慣」としての私たちの年間を通しての行動パターンは意外と意識されていないようです。
・例えば、健康づくりの基準とされる週3~4回20分のランニングをしていても、仕事や家で毎日13時間座っていれば、睡眠時間を除いた残り3~4時間を「どう過ごしていたのか」が問題となりますし、食事などでの摂取カロリーとの関係も問題となります(例えば毎日300Kcalのカロリー消費の余剰があれば33g×365日で年間体脂肪12Kg相当の増加)。米・メイヨークリニックのレヴァイン先生は、同じ体格の人であっても、日常の生活パターンで1日の消費カロリーが2000Kcalも異なること(NEAT:非運動性活動熱生産の動態)を指摘しています。
・ところがデューク大学の人類進化学のポンツァー先生は、「一般的な総カロリー消費量推定法は間違っている」として、単なる機械と異なる私たちの身体は大変に複雑であり、いろいろな要因を加算していっても1日の活動レベルと1日の消費カロリーとはほとんど関係がない・・との見解を示しています。そして、狩猟採集民である活動的なアフリカのハッザの人たちと欧米の人たちとのエネルギー消費量はほぼ同等であるとの測定結果から、1日のカロリー消費量を一定の狭い範囲に収める「制限的日次カロリー消費モデル」を提示します(小巻靖子訳:運動しても痩せないのはなぜか、草思社、2022年)。つまり運動量が増えても、身体はそれ以外の活動にエネルギーを費やすのを控え、1日のカロリー消費量を一定の範囲に抑えるメカニズムが働いていると指摘します。因みに、運動に対する適応としての「エネルギー効率の改善」はエネルギー消費量を若干低下させることが考えられますが、「訓練」と「技術」の影響は予想外に小さいことも指摘しています。
・運動生理学的には、同一距離を同一速度で走った場合の消費エネルギーは「体重」の影響がありますが、実際には発汗による体重減少やランニングスキルの運動効率を改善する工夫など様々な要因が複雑に絡んでくる(ストライドを抑えてハイピッチ走法に転換するとか「カーボンプレート入りの厚底シューズ」に履き換える:数%ランニング効率が改善される場合がある)ため「ひとそれぞれの」カロリー消費量となっているようです。