4月から再開していたた中国の中学校の体育授業時に、1500m走などでマスクを着用していた生徒3名が相次いで死亡したという記事が配信されました(5月10日)。中国メディアの取材に、医師は運動不足状態での突然の高強度運動とマスク着用による呼吸制限から「低酸素症の発症」が疑われるとの見解を示し、また別の医師はN95などの医療用マスクは密閉性が高いため運動には奨められないとの見解を示しています。中国当局はその後、対人間距離を確保することで体育授業時のマスクの非着用を呼び掛けています。
 日本では感染拡大予防のために外出時のマスク着用が呼びかけられています。京都大学の山中伸弥先生もブログでランニング時のマスク(またはネックゲイター:バフ)の使用を奨めており、マスクやバフを着用して走っているランナーを見かけることが多くなりました。
 また運動時の対人距離は重要で、並んでいるときは2m程度ですがランニングやサイクリング時の距離はどうなのでしょうか?
 オランダとベルギーの研究者のデータで10mという例が示されていますが、これについては学術的には疑問や論争が起こっています。コロナウィルスは空中では2m以内に感染性を失うとのデータ(アビガン共同開発者・白木先生)もあり、ランニング速度や風向風速との関係にも複雑で多様な条件があることが推測されます。
 私もランニングで、①N95タイプのマスク⇒②サージカルマスク⇒③布マスク⇒④バフ⇒⑤ウレタンマスク、とそれぞれを1時間ほどトライしてみました。感覚的な結論は単純で「呼吸が楽なものは感染予防効果は低い」「自分がもし感染していれば他人に感染拡大させるリスクは減少する」ということでした。また、これからの季節は暑熱環境が強くなり熱中症への対策も考えなくてはなりません。
 ヒトは、口からの「浅速呼吸(ハーハー・ゼイゼイ)」とともに発汗による体温調節機能をもっており、運動前や運動中の水分補給が重要です。また、体温上昇は運動強度を制限することによっても緩やかにすることができます。
 運動時のマスク着用には、マスク自体の機能性や運動強度との関係、咳エチケットへの対応、対人間距離の確保など様々な条件を考慮するべきだと思います(ランニング学会が指針と見解を出しています)。ただ「マスク非着用で運動するのは ”非常識” 」との自粛自警団のような非難行動は慎むべきだと思います。「弱者」が「弱者」を攻撃するような行動のトレンドはファシズムの前夜です。