運動をしても痩せない・・!

 現代のストレスと運動不足の常態化する社会環境では、人類史的に形成されてきた私たちの身体との「不適合」を起こしていわゆる「基礎疾患」を蔓延させます。ハーバード大学のリーバーマン先生は「ミスマッチ病」としての「非感染性」の49の症例を指摘しています。
 そこで悪化した健康指標の改善(健康づくり)を図るために、「運動-栄養-休養」のライフスタイルの見直しが推奨されるのですが、ライフスタイルの改善はいわば「価値観の転換」が必要でアルコールや薬物の依存症の治療とも共通する困難さが存在しています。例えば毎日の摂取カロリーVs消費カロリーの不等式で150キロカロリーオーバーのケース(例えばご飯一杯とかココア一杯程度)で非活動的な生活を継続すると、1年間で脂肪6Kg相当(1.7g×365日)が増加することとなります。
 ですからいわば「今までのライフスタイルを断ち切る」ような「糖質制限ダイエット」のように糖質摂取を ”めのかたき” のように拒否する不健康な方法が横行することとなります。栄養学的にはタンパク質と脂質と糖質の「PFCバランス」を崩した「低カロリージャンクフード」となってしまいます。また脳は糖質(と乳酸)しか利用できないので低血糖症による脳機能低下や筋収縮でのエネルギー源である「筋グリコーゲン不足」による行動能力低下を招いてしまいます(アスリートは絶対にやってはいけません!)。
 では単純に「運動をすればよいのか?」というと事情は少し複雑となります。デューク大学のポンツァー先生は、狩猟採集民であるアフリカのハッザ族の人も欧米の先進国の人も一日の消費カロリーに大きな差はないという「制限的日次エネルギー消費モデル」を示します(H.ポンツァー:小巻靖子訳、運動しても痩せないのはなぜか、草思社、2022年)。どうやら私たちの身体は「単純な機械」としては動いていないようで、行動パターンや消化吸収機能や身体組織維持・再生プロセスなどを変容させながら「適応」しているようなのです。個人的な経験ですが、私はこの4年間で、月200Kmほど走り三食食べてビールも毎日飲んでいますが、ほぼ6か月周期で年間53~56Kgの体重変動を繰り返しています。

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