「動作モード」の変更で対応?

「太腿四頭筋」は膝を伸ばす主要な筋肉で、その中の「外側広筋」は最大の筋肉です。そして外側広筋は「遅筋線維」と2種類の「速筋線維」から構成され、股関節と膝関節をまたいで同じ個所で骨につながって協働して働いています。垂直跳などの瞬間的運動では速筋系線維が、長距離ランニングなどの持久的運動では遅筋系線維が「主として」活躍します(当然他の筋肉も同時に活動していますが・・)。

そしてその筋収縮のエネルギーを支えるのが3つのエネルギー供給系です。図のTypeⅠは遅筋系線維、TypeⅡaは速筋系線維、TypeⅡd/x(ヒト:ネズミではTypeⅡb)は超速筋系線維で、ATP-CPr系(ハイパワー系)、解糖系(ミドルパワー系)と有酸素系(ローパワー系)からなる「3×3システム」として協働して機能しています。

例えば変速機付きのロードバイクで長い坂道を時速25Kmを維持したまま登っていくケースを考えてください。重いギアで「グイグイ」と登ってゆくと、TypeⅡd/x線維とATP-PCr系だけに頼る「高出力システム」だけが駆動されて坂の途中で力尽きてしまいます。そこで、ギアを軽くして回転数(ケイデンス)を上げる必要があります。ギアを軽くすればペダルは軽くなりTypeⅡaの速筋系線維が参加できるようになります。さらに後半にはもっと回転数を上げれば遅筋系線維も参入できるかもしれません。そして「乳酸シャトル(八田)」を利用して筋グリゴーゲンや乳酸をエネルギーに変換しながら坂道を登りきることができます。

つまり「動作モード」を巧みに変更することができれば乳酸を活用することが可能となります。例えば10Kmロードレースで、ストライド任せでスピードを維持していけば破綻をきたしますので、あるところからストライドを抑えてピッチ走法に切り替えればベストタイムで走りきることが可能となります。ATP-CPr系の「バッテリー残量」と解糖系の「ガソリン残量」と有酸素系の「ソーラーチャージレベル」のメーターを眺めながら、パワードライブモードやエコドライブモードなどを巧に切替えて最速タイムでのゴールを目指すメカニズムなのです。

そしてどうやら100m走でも「オーバーストライドによるピッチの低下」が「結果としての速度低下」を引き起こしているようなのです。

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