脳が「疲れたことにしよう!」と・・

私たちの運動パフォーマンスが低下することは「疲労」という概念でとらえられます
そして疲労には、①「末梢性疲労」という筋肉レベルでの収縮力の低下(例えば筋グリコーゲンが枯渇するレース後半では脚が重く感じて動きにくくなる・・)と、②「中枢性疲労」という脳‐神経系が関与した筋収縮力の低下(興奮剤などを使用したドーピングは禁止されています)、があります
私たちの身体は脳-神経系が主導権を握って、筋肉などの身体系に命令をだしていると考えられていますが、最近は環境系と連動した身体系からの情報のフィードバックも重要であることがわかってきました(いわば「忖度」したり「抵抗」したり「是正」したりするようなもの?)

図は、矢部京之介先生の有名な「心理的限界」と「掛け声効果」に関するもので、300回指を動かし続けると黒丸のように筋力が低下してゆきまが、筋を直接電気刺激をすると筋力はほとんど低下していない(筋にはまだ収縮する能力が残っている)のです

つまり「生理的限界(末梢性疲労)」に先行する「心理的限界(中枢性疲労)」ということで、トレーニングにより両者の差を縮めてゆけばパフォーマンスは向上するということになります(実はこのメカニズムは「安全限界設定装置」として私たちの身体を守ってもいます)

これは「中枢性疲労(抑制)」の「脱抑制効果」といわれるメカニズムですが、では「中枢性抑制」をコントロールする何らかの方法はあるのではしょうか?

筋肉の収縮の特徴を電気的に記録した信号を「筋電図(EMG)」といいます
コンピュータを用いてこの信号の性質を解析すると、1秒間に90回ほど収縮する「速筋性活動成分」と40回ほど収縮する「遅筋性活動成分」が混在していることがわかります
そして筋収縮力が低下しているときは「速筋性成分」が減少していることが分かっています
この際に、ストレッチングやマッサージ、アイシングなどを行った後で同じ筋活動を行うと、何故か「速筋性成分」が復活してきます、つまり「脱抑制」がおこっているらしいのです(続く)

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