「ドーピング」って何ですか?

 オリンピックや世界選手権、パラリンピックなどでもいつも話題に上るのが「ドーピング違反で出場停止」「メダルはく奪」などです。ではその中身はいったい何なのでしょうか?
 実は、スポーツマンの栄養管理で多用されている「サプリメント」の中身の15%は禁止薬物に抵触するとの報告があります。また、カフェインを多量に含んだドリンク剤も一定量を超えると急性中毒症を発症しますが、カフェインも「禁止物質」なのです。
 ドーピングの歴史は19世紀までさかのぼりますし、漢方薬などの「強壮作用」も該当します。ヨーロッパでは、競走馬への興奮剤の使用や自転車競技選手の成績向上を目的とした使用が指摘され、1886年に自転車レースでの最初の死亡例が報告されています。1960年のローマ五輪・自転車100Km団体レースではデンマークチームが興奮剤・アンフェタミンの使用によりチーム4名のうち1名死亡、2名入院という事態が起こっています。また本来は疾病からの回復を促進するための薬剤の「筋肉増強剤」としての使用も1950年代から始まっています。
 「ドーピング」が何故不正行為なのかについて、最大の問題点はこの「副作用」による健康被害の深刻さです(NHK:汚れた金メダル、2015年放映)。
 「運動」「栄養」「休養」のサイクルはトレーニング効果を左右します。持久的トレーニング後は30分以内に「炭水化物(糖質)」を摂取することがスピード持久力のもと「筋グリコーゲン」の蓄積を促進します。また、筋トレ後の「たんぱく質(アミノ酸)」摂取は、筋線維の再生を進めます。有名な「インターバル速歩」後の牛乳摂取はこのメカニズムを利用した筋トレで、筋力増加に効果があることが実証されています(信州大学・能勢教授)。
 実は「筋肉増強剤」によるドーピングは、この効果的トレーニングのサイクルに一つだけ「間違い」を挿入しているのです。トレーニングを伴わない筋力増強剤単独では驚異的効果は得られないのです。また驚異的効果のある「サプリメント」と称する食品(薬品)のほとんどは禁止薬物を含有しているようです。
 現在は「禁止薬物リスト」に載っていない物質であっても「通常以上のトレーニング効果」を目的に使用した場合は「ドーピング」を判定されます。選手に帯同するトレーニングドクターの仕事の多くは、選手のケアと「体調不調時の健康管理(治療薬物の管理)」とのことです。(続く)

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