DNAスイッチ?

 私たちの全遺伝子(ゲノム)はデオキシリボ核酸(DNA)という形でアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)という4つの塩基から二重らせん構造で構成されていることはよく知られています。2020年放映のNHK特集「人体 遺伝子」では、この塩基30億個から構成される全ゲノムのうち、からだを構成するタンパク質を生成する役割が明確ないわゆる「遺伝子」は2%程度で、他の98%の役割は従来はあまり良く知られていなかったことからタンパク質を生成しない ”非コード領域” とされ、”ジャンクDNA”と表現されていた時代もあったとしています。ところが最近の研究では、その98%のDNAがどうやら2%の遺伝子のコントローラーの役割を担っているらしいのです(ラザフォード、ゲノムが語る人類全史、文芸春秋、2017年)。放映ではこれら98%の中に様々な機能(健康や病気)や形態(身体つきや顔つき)に関係する「トレジャー(お宝?)DNA」があることを指摘しています。そしてこれらの遺伝子は受精に際して両親からのゲノム30億塩基のうち70個程の ”突然変異” が生じるとのアイスランドのdeCODE社のステファンソン教授の研究を紹介しています。遺伝子変異で生存に有利なものは淘汰圧となり私たちに貢献します。私たちホモサピエンスに2%ほど含まれているネアンデルタール人由来の遺伝子は、5万年にわたった世界拡散の中で寒冷環境への適応や免疫遺伝子への貢献があったとされています。
 さらにこの遺伝子の変異が「DNAスイッチ」ともいうべき役割を果たしていることを指摘し、生活習慣を反映した遺伝子変異が生ずるということ、更にそれらが「受精」に際してリセットされず、孫子の代にまで影響するといったスウェーデンのカロリンスカ研究所のビグレン教授の研究を紹介しています。これは北部の孤立した村の疫学研究の結果、祖父の代に「大豊作」を経験した子孫が心臓病や糖尿病を高い頻度で発症していること、さらにオーストリアのアデレード大学でのマウスを用いたシミュレーション実験での同様の結果を紹介しています。
 つまり98%に含まれる様々な遺伝子スイッチのONやOFFが、私たちの健康や様々な能力に影響を与えておりそれが受精に際して子どもに引き継がれる可能性があるというものです。故に私たちはいつも ”清く正しく” 生きないといけないのでしょうか?
 

 

SNSでもご購読できます。