パレオダイエットって何ですか?

 時々耳にする「パレオダイエット(Paleodiet)」とは、200万年前の旧石器時代の食事メニューで人類本来の健康を取り戻そう・・という意味なのですが内容はというと様々あるようです。「低糖質食」と混同されているようですが、パレオダイエットではパンやご飯は当時はなかったということから、芋や果実などの糖質を推奨しています。そして旧石器時代ですので基本は狩猟採集生活・・朝日で目覚めて10~15Kmほど歩き回り早く寝る・・という「清く正しい生活」が求められます。
 2020年、NHKで「食の起源」という特集が組まれました。「ご飯」「塩」「脂」「酒」「美食」というトピックスを進化の歴史から探るというもので、「ご飯」の特集では「低糖質ダイエット」の危険性が指摘されました。200万年前の「ホモ・エレクトス」段階からの脳の大型化は、狩猟で恒常的に獲得した肉などのタンパク質摂取量の増加がもたらしたという従来の考えに対して、火の発見による「加熱調理」により根茎や芋や果実の炭水化物が「糖質」に変化し脳の神経細胞にエネルギーを大量に供給できるようになったことが原因であるとの見解を紹介しています。確かに脳は「糖質(時には乳酸)」しか利用できずタンパク質や脂質からエネルギーを得ることはできないのです。また、8000年ほど前からの恒常的な穀物生産(農業革命)に伴い身体や脳の若干の小型化と炭水化物の消化(糖質化)にかかわる「アミラーゼ遺伝子」を獲得したことも指摘されています(遊牧民は乳糖分解の「ラクターゼ遺伝子」を獲得したので大人になっても乳製品を消化できる)。アミラーゼは炭水化物をすみやかに糖に分解し「甘さ」を感じるのでインシュリン分泌が改善され高血糖症を予防する可能性が指摘され、低炭水化物食の人たちは心臓血管系の疾病発症リスクが高いことも指摘されていました。つまり進化のプロセスで私たちは食べ物に関する遺伝的適応(有利な遺伝子を持った子孫が生き残る淘汰圧があった)を果たしたようで、その意味では旧石器時代のままではないようなのですが、「塩」「脂」「酒」などの過剰摂取の誘惑は現代の我々の健康に影を落としていることも事実です。(続く)

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