疲れた時はそれなりに・・

 よく「理想的なフォーム」は何ですか?と質問されます。
 ブレーキのかかる「踵接地」よりは「フォアフット接地」が良いのですか?、ピッチ走法の方が良いのですか?、呼吸法は「吸-吸-吐」の3拍子が良いのですか?、走りのリズムは3拍子と4拍子のどちらが良いのですか?など多々あります。
 ウサイン・ボルトの100m世界記録(9”58)時の速度曲線は70m以降じわじわと低下していますが、この時のランニングにかかわる筋の働きは「速度低下をもたらさないスキル」に対応して、トップスピードをなるべく低下させないような走り方に変更(適応)しているようなのです。実は20世紀までの100mの速度曲線は60mのトップスピード以降は低下(多分 ”オーバーストライドでの失速” )していたのですが、21世紀に入ると60m地点でトップスピードになるようなレース展開では「ベストタイム」が出せない(それ以降の速度低下が大きすぎる)と判断し「レース戦略」を変えてきたようなのです。これはエネルギー供給系の変容(ハイパワー系と解糖系の比率)に応じてスキルを変容(適応)させ、結果的にベストタイムが更新できるようトレーニングをしているものと考えられます。
 つまり「最高速度」を発揮することと「ベストタイム」を出すこととは異質の問題だったようです。「元気な時ははつらつと」そして「疲れてきたらそれなりに」動作を変容させ「トータルとしてのベストタイムがでる」ように適応制御できるトレーニングのほうがより「リアリティ」が高いと考えられています。
 「理想的なフォーム」は「エネルギー供給系のモード」に応じて複数存在するようで、特定のフォームに固執していては最終的に破綻をきたしベストタイムは生まれてこないようなのです。
 下図はたびたび紹介している全体のイメージです。

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