筋の3×3システムって何ですか?

 私たちの筋肉は大きく分けて「速筋系」と「遅筋系」の筋線維から構成され、さらに速筋系はTypeⅡaという普通の速筋系とTypeⅡb(d/x)といういわば「スーパー速筋系」に分類されます。速筋線維と遅筋線維の比率はそれぞれの筋によって異なっており、またその速筋/遅筋線維の構成比は変わらないといわれています。ところががTypeⅡaとTypeⅡbとの比率は、トレーニング内容によって変化しトレーニングをやめると元に戻るようです。また、長期的には加齢によって速筋線維の割合が低下(退化)することも指摘されています。
 この速筋/遅筋線維比は、関節をまたいで反対の方向に動く「拮抗筋」と協働して「動きの性質」を決めます。力強く大きく動くのかこまめに持続的に力を発揮するのか・・また拮抗筋はそれとどのように協働すべきかということが「神経系からの司令」によって決定されます。
 一方、筋線維の内部では筋収縮のためのエネルギーを生み出す必要があります。短時間大きな出力を得るには「クレアチンリン酸系」というバッテリーのようなシステムが、スポーツ動作のような一連の高出力は「解糖系」というガソリンエンジンのようなシステムが、そして解糖系で生まれた「乳酸」のエネルギーへの変換や糖質や中性脂肪からの持続的エネルギー産生は「有酸素系」というシステムが関与します。
 つまり筋は3つの「動きをつくりだすシステム」と3つの「エネルギーをつくり出すシステム」の「3×3システム」で構成されていることとなります。さらに主働筋と拮抗筋とそれらを補助する筋から構成される「マルチレイアシステム」という大変に複雑なシステムを上手に使いながら最後まで身体運動を支えてくれているようなのです。
 長い坂道を変速機付きのロードバイクで時速15Kmを維持しながら登っていくシーンを想像してみてください。最初は回転比が低い重たいギアでペダルを踏んでいきますが、すぐにギアを軽くして回転数を上げペダリング負荷(出力)を軽減します。さらに最後にはギアを更に軽くして最大限の回転数でスピードを維持したまま何とか登り切ります。この時もペダリングで踏み込む太ももの大腿四頭筋と引き上げるハムストリングスに加え、足首のペダリング動作を支える腓腹筋や前脛骨筋などが協働して、それぞれの3×3システムを最大限に活用して支えてくれているようなのです(続く)。

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