義足は有利なのか?

 レーム選手の障がいクラスは膝下切断(T64)、日本の山本篤選手は障がいの程度が上の膝上切断(T63)で6m62の記録を持っています。両者の記録の差は1m86cm、ただT64クラスの歴代2位とも1m以上の差がありレーム選手の記録が突出していることを示しています。400mのピストリウス選手は膝下切断クラスで45秒07の世界記録を持ってますが、2016年リオ・パラリンピック400mでは上位3名がいずれも46秒台とレベルアップしてきています。
 外部からエネルギーを得ているわけではないので、義足を撓ませてエネルギーを蓄えるのは自身の体重と筋力とスキルとの「身体の使い方」でなされます。この点で「助力」とはいえないのですが「運動様式」が異なるか否かが論議の分かれるところだと思います。 車いす(Wheel Chair)でのフルマラソンは、障がいの軽いクラスではハインツ選手の1時間20分14秒が世界記録です。これは運動様式が全く異なりますので有利不利はありません。 自転車競技で小型モーターを隠して着装する「メカニカル・ドーピング」も「外部動力」使用の不正を規制したものです。
 また、走幅跳は「義足側」で踏切ますが、走高跳では「健足側」で日本の鈴木徹選手が2m00をクリアしています。これは助走スピードの変換方向に関係しているのかもしれませんので、単純に「義足が有利」とは言えないように思います。レーム選手は、7mジャンパーだったころは「よく頑張っているね」といわれていたのに、8mを超えて五輪出場が現実味を帯びてきたころから、代表枠の人数を含め「義足は有利ではないか?」と他のコーチから問題視されるようになったとコメントしていました。
 私自身は、同様の運動様式で障がい者と健常者がともに競い合うということに特に問題はないのだと思います。 車いすテニスは「ツーバウンド・ルール」がありますが、かつて国枝慎吾選手は関東選手権に通常のルールで参加していました・・勝った相手選手は”完全アウェー状態(?)”だったとコメントしていたそうですが・・。
 2012年のロンドン五輪でピストリウス選手が400mと1600mリレーに出場して「門戸」を開きました。私たちが「人々の多様性を尊重し共生してゆく社会」を目指すとき、障がい者とともに競い合うスポーツは「人間の尊厳とは何か?」を改めて問いかけてきているように思うのです。

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