最近「遺伝子検査」サービスが話題となっています。ガンや生活習慣病、肥満や肌のタイプなどのリスクについて数万円程度で検査結果がわかるとうたっています。医学研究では血液採集が主流ですが、通常の検査キットは「唾液(口腔内皮のかけら)」を採集して送付する方式です。
結果の受け止め方は様々なようで「全くあてはまらない」から「何となく納得できる」まであります。遺伝子の判定は、特定の遺伝子(多型といいます)についてその「機能」や「表現型」から推測します。また、質問項目(本人や親族の身体状況や既往歴など)への回答からも判定しているようです。
スポーツに関係して話題になるのが筋の性質を決めると考えられているACTN3という遺伝子で、バンクーバー冬季五輪の2010年2月に「金メダル遺伝子を探せ」のTV放映で話題となりました。
ACTN3の577番目にある速筋系筋線維の構造を強化するアルギニンというたんぱく質を作れるか否かで「CC(RR)型」「CT(RX)型」「TT(XX)型」に分類され、CC型は「瞬発系競技」にTT型は「持久系競技」に向いているとされています。
特殊なたんぱく質を作らない能力が何故持久的運動に有利なのかについては、オーストリアのノースが、ネズミの持久的能力の実験でTT型に類似したマウスのほうが長時間運動を継続できるとのデータが根拠です。ただこれはランニングベルトの速度が遅いので、ベルトの速度が速ければ、短時間でもTT型はついていけずCC型は走れるということを意味しています。
じつは私も3年前にこの「運動遺伝子検査」を受けたところ、三段跳選手である私の筋線維のタイプはTT型で、一流跳躍選手になれなかった理由が垣間見えました。
また持久的能力にかかわる他の遺伝子多型にACEがあります。これは血圧上昇にかかわるアンギオテンシノーゲンというホルモンに関連する因子で、血管収縮能力に関連していて、持久型と瞬発型にかかわります。更にPPARGC1A遺伝子は、有酸素的能力にかかわる筋肉内のミトコンドリアの生合成(PGC-1アルファたんぱく質の増殖)にかかわる因子で、持久的トレーニングの効果に関連しています。この遺伝子がネガティブなタイプの人は、持久的トレーニングの効果が期待されませんので「走るのなんか大嫌い!」となるのかもしれません。ただし、持久的運動は健康維持のために必要ですので、テニスやバドミントンや卓球を長~く楽しくやる必要があるのです。(続く)