カンガルーのジャンプ力は?

 時々、TVの映像でカンガルーが飛び跳ねているシーンが放映されます。実はカンガルーは、時速40Kmで2Km(3分間)移動可能であるといわれていて、最大時度70Km、最大ジャンプ幅13mという驚異的運動能力の持ち主です。発情期には1日100Kmも移動することも知られていて、何故か「瞬発力」も「持久力」も優れているのです。
 これを可能にしているのが長いアキレス腱です。カンガルーは筋の収縮を利用して跳んでいるのではなく、勢いをつけた着地の際にふくらはぎの腓腹筋を緊張させます(長さを変えない)。すると長いアキレス腱に弾性エネルギーが蓄積されて短時間で「バネ」の要素が働いてジャンプを可能にしてくれるのです。つまり余りエネルギーを無駄遣いせずに高い運動能力を実現しているのです。
 このメカニズムを支えている構造が「筋腱複合体」といわれ、垂直跳や立幅跳とは全く異なるメカニズムが働いています。”リバウンドジャンプ” とか ”プライオメトリクスジャンプ” という「落下(着地)で得られた弾性エネルギー」を再利用する運動のやり方なのです。
 ランニングもこのメカニズムを巧みに利用しています。私たち人類のご先祖様は、アフリカのサバンナで30Km近く獲物を追い回して熱中症でダメージを与えて捕獲する戦略をとっていました(持久狩猟)。絶対速度は遅いものの継続したランニングが重要で、そのためには長いアキレス腱や大殿筋を利用してエネルギーの無駄遣いをせずに走ること(筋活動で膝の曲げ伸ばしをあまり使わないこと)が必要だったのです。またこの際には脂肪(遊離脂肪酸)からエネルギーを生産する代謝経路を活用します。糖質は大型化した脳を十分働かせるために使い、脂肪は長時間移動のために使うという戦略をとったのです。
 ランニングはこの弾性エネルギー再利用のために「跳ねる(遊脚相といいます)」のに対して、歩行は跳ねません。それ故ランニングのエネルギー効率が数十%であるのに対して歩行は18%以下であるといわれています。ところが競歩の一流選手(10Km38分位)はなんと28%にも達していることも分かっています。
 つまり私たちには弾性エネルギーを上手に使う能力があるようで、「効率よく運動すること」は人類の才能のようなのです。

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