”鉄は熱いうちに・・” 打ってもいいのかな~?

「発達段階の推定」は子どものスポーツを考えるうえで大変重要な概念です。誕生日からの暦年齢と生物学的年齢に±3年のずれがあるとすれば、中学1年生では、発達段階が小学校5年生から中学校3年生に相当する子どもたちがいることになります。男の子では小学校5年生段階から遅筋系線維の発達が始まり、ある程度の筋力もついてきてスポーツらしい動作の獲得が可能となってきます。
しかし、身長の急成長も始まるため、骨は成長軟骨の成長により長くなりかつ筋の伸長が追い付かないため関節可動域の低下もまねきます。また骨格-筋の構造上、成長軟骨の近くに筋が付着していますのでいわゆる「成長痛」をまねきやすくなっているのです。
筋力がついてスポーツ動作ができるようになり、かつ持久的な筋の性質なので繰り返し練習に適しているのですが、骨格-筋の構造上スポーツ障害も発症し易いという大変複雑な段階にあるのです。

「鉄は熱いうちに打て」と例えられますが、打ち方の工夫も必要で、熱いうちに大きな衝撃で打つとスポーツ障害を発症するリスクも高いのです。また、子どもは「楽しい取り組み」でないと「糖動員性」という活動エネルギーを生み出す機能が活性化しません。大人は苦しい課題でも意義を理解してエネルギーを生産できるのですが子どもは楽しくないと活動エネルギー不足になってしまいます。
スピード&パワー系の発達は、身長の急成長が過ぎた高校生頃から始まります。これは大変合理的なことで、身長の急成長期にスピード&パワー系が発達すると自分の身体を自分で壊してしまうのです。

「臨界期(Critical Period)」という概念があります。これは特定の機能が発達するときにそれに必要な環境を準備しないと後からでは「手遅れ」になるという考え方です。小学校4年生までは「動きづくり」、小学校高学年から中学校期はその動きを繰り返す「持久性づくり」、そして高校生からは本格的な「スピード&パワーづくり」というトレーニングカリキュラムが求められているのです。そして「発達段階の推定」という視点から、暦年齢と生物学的年齢を考えてゆくことが重要です。
特に身長の急成長期の把握はスポーツ障害の予防に重要な意義を持ちます。毎月身長を測定して成長曲線を描くことはとても大切なことなのです(続く)。

(図 青木純一郎、発育期における適切なトレ―ニングとは、臨床スポーツ医学、1988年を山崎が加筆)

 

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