スポーツマンの栄養摂取は?

スポーツを行う人の栄養摂取上の課題は何でしょうか?

パフォーマンスの向上にかかわっては「増量」と「維持」と「減量」が重要となりますが、原則は「筋肉量の維持」だと思います。
増量では「体脂肪量を増やさず筋量を増やす」こと、減量では「筋量を減らさず体脂肪量を減らす」ということです。
運動選手が「体重を落とさなくては」と思い込み「低糖質ダイエット」を行うと、スピード持久力のもとである筋グリコーゲンが低下してすばやく動き続けられなくなります。また、筋や赤血球を分解してエネルギーを補うようになってしまい、筋力低下や貧血をまねき「本末転倒」の結果となります。体脂肪(特に内臓脂肪)の減量のためには「低強度の有酸素運動(ゆっくりとした持久的運動)」が有効で、脂肪と糖質をバランスよく消費させることが重要といわれています。

競技によっては、体脂肪を含めた体重がプラス要因になるケースもありますが、重くなった身体をスピーディーに動かすためには筋力が必要です。一部のお相撲さんのように、筋力に見合わない体脂肪量の増加は、関節や靭帯への負担増から怪我を誘発してしまいます。
最近は筋力トレーニングの重要性が指摘されています。パワーアップやスポーツ障害の予防には筋量の増大が効果的で、適切な筋トレとその後のタンパク質(アミノ酸)摂取が有効とされています。しかし、タンパク質の過剰摂取(体重1kg当たり2g以上)は体脂肪の蓄積をまねき、一方体重当たり1g以下ですとパフォーマンスの低下をまねくとされています。

筋グリコーゲンの蓄積には運動終了後30分以内の糖質摂取、筋量増大には運動終了後30分以内のタンパク質摂取の重要性が指摘されています。つまり、運動と食事のタイミングが重要で、練習後30分以内に栄養摂取が可能な環境を整えること(練習直後は「補食」で補いその後食事を摂取することなどの工夫)が必要なのです。
数十万年にわたる進化のなかで、人類は長時間の狩猟採集活動を続けるために糖質からも脂肪を合成することができるようになりました(皮肉なことにこの「非常用燃料の蓄積」という生存戦略が現代社会に蔓延する肥満をまねいています・・)。一方体脂肪(特に内臓脂肪)は、「遊離脂肪酸」というかたちでゆっくりとした持久的運動を支えてもいます。そこそこのスピードが必要とされる競技(市民マラソンなど)では「筋グリコーゲン」と「遊離脂肪酸」の両者が活躍するようなトレーニング内容と栄養摂取への取り組みが重要なのです。

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