”低糖質ダイエット”と健康

最近の「お父さんのメタボ対策」で話題の ”低糖質ダイエット” ですが、確かに過剰な糖質(炭水化物は糖質と繊維質を含みます)摂取は、人類の宿命としての「脂肪蓄積」を進めます。これは数百年前の農業革命以降に起きた遺伝子的変化でもあり、20万年前から狩猟採集生活をしていた人類の宿命でもあります。
人類の大型化した脳は、一日のエネルギーの20%の糖質を必要とします(β酸化という体脂肪からのエネルギールートは使えません)。そこで狩猟採集生活をしていたころから、必要で貴重な糖質をすべて脳のために回して、移動のためのエネルギー源をとりあえず蓄積した脂肪から「遊離脂肪酸」という形で利用する(ゆっくりとした移動で使われる)ようになりました。チンパンジーなどは数%の体脂肪率ですが人類は20%以上の「非常用脂肪」を蓄積しています。このように脂肪組織から活動エネルギーを作り出せるようになったので、人類は ”のべつまくなしに食べ続ける” という行為から解放されましたが、身体運動をせずに精神的ストレスが増加すると「脂肪の過剰蓄積」をはじめるという厄介な宿命も背負ってしまいました。
ですから肥満傾向の強いお父さんには確かに ”低糖質ダイエット” が一定程度効果的なのですが、逆に現代の日本女性では「過剰な痩せ志向」の影響で、健康上必要なエネルギーに対して摂取エネルギーが平均300Kcal少ないという統計結果が示されています。いわゆる「痩せすぎ女性(実は高齢者も低栄養状態と言われています)」は、極度の糖質制限をしていますので、食事から必要なエネルギーが得られず、自分の身体の筋肉や赤血球、免疫細胞まで分解してエネルギー不足を補い、かつ脳の「低栄養状態(低血糖性昏睡を誘発する)」を進めてしまうといわれています。
また、タンパク質(P)と脂質(F)と糖質(C)から構成される食事内容のPFCバランスの崩れも健康上は問題です。タンパク質15%と脂質25%、糖質60%という「和食バランス」が推奨されているのですが、低糖質ダイエットは相対的にタンパク質と脂肪の割合が増加した「低カロリーファーストフード化」を進めてしまうのです。
「運動」「栄養」「休養」のバランスではなく、「運動抜き」の ”自己流の低糖質ダイエット” を続けていると様々な健康上の問題を引き起こしてしまい、スポーツをやるどころの問題ではなくなってしまいます。
ではスポーツマンのための栄養摂取ではどういった注意が必要なのでしょうか(続く)

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