エコロジカル・アプローチ?

 サッーカーコーチ・植田文也さんの「エコロジカル・アプローチ」(ソル・メディア、2023年)が話題になっています。「新しい学習理論と実践」という内容は、ポルトガルのポルト大学で出会った考え方がルーツにあるようです。
 キーワードとしては「制約主導アプローチ」で、「個人制約(構造的と機能的)」「タスク制約」「環境制約(物理的と社会文化的)」という3つのカテゴリーから「知覚-運動カップリング」を改善しようとするものです。そして(1)代表性、(2)タスク単純化、(3)機能的バリアビリティ、(4)制約操作、(5)注意のフォーカス、の5つのプリンシプルを指摘します。分かりやすいものが第4章の「ストリートサッカーは自然な制約主導アプローチである」の内容です。アスファルトや土、芝などのサーフェスの制約、ボールの大きさや重量や弾性、3対3や5対5などのプレーヤー数、参加者の年齢や性別、コートサイズやゴールの形状など様々な「制約」を含むものがストリートサッカーであり、そのなかで子どもたちは様々な身体操作やスキルを獲得してゆく(『型』にはめ込もうとする指導システムでは獲得されない)と指摘します。これはサッカーとフットサルとの関係(”ドナースポーツ”という概念)とも関連するようです。
 実は、日本の「学校体育研究同志会」の優れた授業実践の一つに3対2の「じゃまじゃまサッカー」という教材があります。コート中央に「守備専用のじゃまゾーン」があり、そこを3名で連携して突破することで「シュートゾーン」に入れるという教材です。またホッケー教材ではゴールを「ゲート型」にして『縦方向』にセットすると「横方向からの連携してのシュート」が多用されるようになったとの実践報告もあります。また小学生用のバレーボールボールには「4号軽量球」がありますしミニサッカーゲームでは「フットサル用ボール」を使用することでゲーム展開が変わってくることも指摘されています。
 視覚情報に関わる「アフォーダンス理論」や東大の多賀厳太郎先生の「神経系-身体系-環境系」との不断のトップダウンとボトムアップの反復が「シナジェティックという新秩序を生み出す」という考え方とも通ずるものがあるように思います。関心ある方はご一読をお勧めいたします。

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