”キネティック・チェーン” って何ですか?

 私たちの身体は、上肢や上肢帯(肩甲骨と鎖骨)、体幹と骨盤、下肢などのセグメントといわれるもので構成されて「全身運動」を実現します。そしてこのセグメントをうまく連動させて動かすことで効果的に力を発揮することができます。カンガルーの連続ジャンプは、接地の直前にふくらはぎの腓腹筋を収縮させてアキレス腱を引き延ばし接地エネルギーをアキレス腱に蓄積させその反動で連続ジャンプを行います。腓腹筋の収縮力でジャンプをしているわけではなく、足首の関節を固定してアキレス腱を伸長させることによって大きな連続跳躍力を発揮しているのです。
 実は垂直跳や立幅跳という「ピストン型」のジャンプと足関節と膝関節を固定した「スイング(起こし回転)型」のジャンプとは異なるので、接地時間を短くした ”プライオメトリクス・トレーニング” が有効とされています。
 ボート競技でのローイングでは、先ず膝関節を伸ばして座椅子を移動し次いで体幹を後屈させ最後に腕でオールを漕ぐという3段階を連結して力を発揮をします。このような身体セグメントの連続的な使い方を”キネティック・チェーン”といいます。またこの際、セグメント同士の固定や解放のタイミングが重要で、下肢や体幹の動作がまだ主要な段階なのに焦ってオールを引くタイミングを早めてしまうと上手く力が伝わらないのです。
 体幹トレーニングの重要性は、このセグメント同士の連結と解放の関係性(タイミングや力の強弱)を改善することが重要なので様々なメニューとその目的を理解したうえで実施することが重要です。先日、NHK:ランスマで紹介された東京国際大学駅伝チームのトレーニングも、13種類の体幹トレーニングや20種類の動きづくりメニュー、その他の様々なドリルもその狙いと効果を意識して実施することの重要性が指摘されていました。
 トレーニングの効果を確認するにはビデオ画像を用いることが効果的です。最近のデジタルカメラでは、1/30秒だけではなく、1/120秒や1/1000秒などの高速度再生(スローモーション化)ができるものがあります。また、身体にセットする「ウェアラブル・センサー」も開発されています。ランニング用ではC社とA社が共同開発した9軸加速度センサー(腰部装着型)が、前後動・上下動・左右動・左右回転・前後傾などから接地時間や接地衝撃、減速量と関節の硬さなどのデータを表示しランニングの特徴を示してくれます。疾走速度や疾走動作を意図的に変えるとそれぞれのデータが変化するのが分かります。また歩行解析用のシステムも市販されていますので、自分の動作の情報を得ることができればトレーニングの効果を確認することも可能になります。スポーツ科学者にでもなった気分でチャレンジしてみるのも楽しいと思います。

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