「痛み」の背景には大変複雑なメカニズムがあるといわれています。「末端が痛い」といっても「痛覚」を認知するのは脳での「意識(ことば)」です。末端が強い刺激を受けた時には「防御反射」で刺激を受けた側を屈曲して反対側を伸展して刺激を回避する行動が生じ、その後「熱かった」「冷たかった」「痛かった」といった言葉でその後の対応を行います。また「閾値」といってどのレベルの刺激量から防御反射が生じて痛いと感ずるのか、予想外の刺激なのか予測された刺激なのかによっても反応は異なります。
運動との関係でいうと「関節の可動範囲」を越えて動かそうとすると痛みが生じます。つまり「動かさなければ痛くない」のですが、じっとして動かないでいるとコリのような痛みも生じます。本来私たちの身体の構造(骨と関節と筋肉、感覚神経と運動神経)は「動く」ようにできていますので「じっとしている」と不都合が生じます。また、特定の動きだけを反復していても身体の機能や構造の関係が「本来の多様性」を失い不都合(他の動きの可動域の制限による痛みの発生など)を引き起こします。これは犬や猫が目覚めるとストレッチングを行うことに象徴的です。
関節の可動域は、屈曲と伸展をつかさどる「拮抗筋」の長さで決まります。筋に緊張(トーヌス)が残っていて短縮気味だと可動域は狭くなりますし、収縮する距離も短いのでパワーが出ません(パワー=筋力✕収縮距離)。ストレッチングやマッサージを行うのは準備運動だけでなく運動後の筋緊張を低減させ関節可動域を回復させるためにも重要です。
動かしたときの「痛み」は、筋自体ではなく腱を介した骨との接合部で起こることが多いと思われます。アキレス腱痛や野球肩、テニス肘などはその典型で、炎症を起こしたり腫れたりして何らかの処置をしないと運動をすることが困難となります。原因の一つには「過伸展の反復」があるとされ、筋力がなかったり筋力低下があると可動域を「正常範囲に制限する」ことができなくなります。ジュニア用の運動用具が軽量に設定されているのはこのことと関連しています(これは筋力の低下してきたベテラン選手でも同じこと)。特に成長期の子どもは骨の縦方向への成長が大きいので炎症や「若木骨折」などを誘発する可能性が高いのです。(続く)