ケニア人ランナーの「フォアフット接地」に関連して、子どもの頃から裸足で走り回っているので「深部足底屈筋群」が発達してそのような走り方を可能としていることが指摘されています。この筋は足底の縦横アーチを形成して「バネ」を生み出します。一方ふくらはぎの「腓腹筋」は足首を伸ばすことで力を生み出しその場ジャンプやダッシュ力に貢献しますが、疾走速度が高いとエネルギーが大きくなるので貢献(関与)しにくくなってきます。これは、疾走速度が増大するにつれて、推進力を生み出す主役が「足首」⇒「膝」⇒「股関節」へと移ってゆくからです。
ランニングシューズには「衝撃吸収性」と「反発性」という矛盾した性能が求められます。あまりに柔らかいとショックは緩衝してくれるのですが反発性がありません。ベアフット(裸足)シューズといわれるヒールもソールも薄いタイプでは、反発性はあるのですが衝撃吸収性がないため、「踵接地」は改善されるのですが脚へのショック(ストレス)が増加してランニング障害を誘発することがあります。
また、シューズの重さが増えるとエネルギー消費量が増加し、長時間走っていると後半疲労感が生じます。かといってあまりにも軽いシューズ(かつては片足100g以下の製品もあった)では、接地衝撃の吸収(緩衝)にも筋力を使ってしまいます。ですからシューズメーカーは、この矛盾を解決しようと軽いが衝撃吸収性がありかつある程度の反発力のある素材(クッション材)の開発に力を入れています。
裸足やベアフットシューズでのランニングは、踵接地をすると衝撃が大きいので自然とフォアフット(フラット)接地になるのですが、この衝撃の緩衝に使われる筋力発揮(膝関節の動きで前面の大腿四頭筋が対応する)をいかに軽減できるのかがポイントとなります。
原理は実に簡単で「ストライド(歩幅)を狭くする」のです。ストライドが狭ければ滞空時間が短いので接地エネルギー衝撃は少なくなりますので緩衝エネルギーも軽減されます。また、接地位置もブレーキのかかる前方から、腰の下に近くなります。ただし、ストライドを狭くするとスピードが落ちますので回転数(ピッチ)を上げる必要性が出てきます。実は、”疾走速度=ストライド長✕ピッチ”という関係は、短距離スプリントであっても長距離ランニングであっても同様で、「ピッチアップ」こそがスピード持久力改善のポイントのようなのです。そして、接地衝撃の軽減が可能となるのでランニング障害の発症予防にも貢献する可能性があるのです。