ベテラン選手活躍の背景は?

最近様々な競技でベテラン選手の活躍が話題となります。また、トップクラスの選手だけではなくマスターズ競技などでも日本記録や世界記録が更新され続けています。
一番の要因は「競技を続けられる環境」が整ったことだと思います。かつては高校や大学を卒業すると仕事との両立(特にチームスポーツなど)がなかなかできず、一部の選手を除いて「引退が当然」という雰囲気でしたし試合のできる条件も整っていませんでした(この点でスポーツ連盟のスポーツ祭典は先進的でした)。また、競技を続けている選手が少なかったのでトレーニングやコーチングのノウハウも蓄積されていませんでした。
もう一つの要因は、スポーツ医科学やトレーニング科学の進歩とその適用範囲の拡大があります。これはスポーツを実施する年齢層の拡大にも対応したものです。年齢を重ねれば「機能低下(退化)」は免れません。しかし、どの程度低下するのかは実はよく解っていなかったのです(やったことのある選手が少なかったのでデータがなかった)。身体的コンディションがある程度維持できていれば、ベテラン選手は経験が豊富ですので当然有利になります。
また、ベテランのトップアスリートは、監督・コーチやゲームアナリスト、トレーナーや管理栄養士といった「スタッフ集団」を組織しています。当然財政的裏付けがなくては集団を維持できません。国立スポーツ科学センタ(JISS)や国立トレーニングセンター(NTC)では、これらを競技団体(FS)と連携して支援していますが、一般のベテランスポーツマンでは支援を受けることができません。それでも、ある程度の経済的負担はありますが、医師やトレーナー、トレーニング施設の個人的利用ができるようになったこと(それなりのノウハウも蓄積されている)はかつては考えられなかったことです。
その一方で、ベテランになってもスポーツを実施できる人とそうでない人との「格差」の存在も深刻な問題です。「貧困」には、経済的・時間的・社会的・文化的の4つの「貧困」があることも指摘されています。本来この問題の解決こそが最も重要なことなのだとも思います。(続く)

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