先日(3/25)、NHKで「フロンティア:糖でヒトは進化した」が放映されました。
実は「低糖質ダイエット(糖質制限)」や「パレオダイエット(石器時代並みに肉食優先)」や「ヴィーガンダイエット(動物製食品を摂取しない)」など様々なダイエット法が紹介されていますが、「スポーツ栄養学の視点」から見ればいずれもアスリートには不適切な方法です。当然「運動-栄養-休養」を基本とする健康的なライフマネジメントの観点からもNGということとなります。
実は他の番組でも指摘されていることなのですが、肉食に偏ったパレオダイエットは人類学的には事実誤認です。狩猟採集生活を実施していたといっても獲物である動物を日常的に狩猟することは困難で、採集による「果実」「木の実」「根茎」「塊茎」などの炭水化物(澱粉)を摂取することが原則となります。ハーバード大学のランガム先生は、200万年前のホモ・エレクトスの段階から火の利用による「加熱調理」が澱粉から糖質への変換を可能とし、脳の大型化を促したとの指摘をしています(R.ランガム、火の賜物 ヒトは料理で進化した、NTT出版、2010年)。
では何故このような様々なダイエット法が関心を集めるのでしょうか?
最大の要因はハーバード大学のリーバーマン先生が指摘する「ミスマッチ病」です。これは、メタボリックシンドローム・2型糖尿病・肝硬変・冠状動脈疾患など47の症例に代表される健康障害で、人類の進化プロセスに逆行する「ディスエボリューション」とされています(D.リーバーマン、人体600万年史、早川書房、2015年)。お馴染みの「過食」「運動不足」「精神的ストレスと社会的不安感」「生活リズムの乱れ」などなど様々な要因が複合して体脂肪(内臓脂肪)の過度な増加を誘発することによるものです。内臓脂肪からは「アディポサイトカイン」と総称される様々な生理活性物質が分泌され「高血圧」「冠状動脈疾患」「高血糖症による糖尿病」などを誘発します。
このことから「内臓脂肪の過度な蓄積」を改善するための食事制限としての総カロリー量の「適正化」のための様々なガイドラインが示されています。体脂肪蓄積は「貯金」に当たりますので「解約」する必要があります。身体運動量を確保してカロリー消費を増やす「普通預金の解約」が前提ですが、過度な体脂肪はいわば「高額定期預金」に当たりますので解約にはそれなりの時間と方法が必要で、長期間の「断食」などの劇的な方法も試みられています。
従来通りの「日常生活」と「食事」を繰り返していては「定期預金」は解約されませんので、「糖質制限」や「非動物食」などの様々な「実行可能なダイエット方法」が提案されることとなります。(続く)