
_私たちが運動を継続的に実施するためのエネルギー供給系は、いわば「ソ-ラーパネル」の有酸素系と「ガソリンエンジン」の解糖系と「バッテリー駆動」のクレアチンリン酸系の3種類の「ハイブリッド供給構造」を持っています。一方、動きを作り出す筋システムは、持続性の強い「遅筋系」とそこそこの出力を持つ「速筋系」と瞬間的に大きな力を発揮する「超速筋系」の3種類があります。つまり3つの「エネルギーを生み出すシステム」と3つの「動きを作り出すシステム」から構成される「3×3システム」となっています。また遅筋系筋線維も「ソーラーパネル」が主要なものの3つのエネルギー供給系があり速筋系筋線維も「ガソリンエンジン」が主要なもののやはり3つのエネルギー供給系があります。
_しかも私たちの身体の構造と機能は複雑なので、複数の「拮抗筋」と「協働筋」が関連して収縮する「マルチ3×3システム」として存在しているのです。ですから「運動指令」は個々の筋を動かすものではなく複数の筋群を連動させる「動作(基本的運動形態といいます)」として発せられており、ATRの川人光男先生は、動作と力に関わる「関節トルク」という性質を持っていることを指摘します。つまり「軽く叩け」とか「グンと引け」といった性質を持っているようなのです。
_ですから100m走と10000m走では、同じ「走る動作」であっても使っている「3×3モード」が異なることとなります。まさにエネルギー供給状況と動作モードに応じて「切り替えを」実施しています。さらに、山崎(2015)は、10000mレース中の疾走動作の解析をおこない、2000m地点と4800m地点と8800m地点ではほぼ同一の疾走速度であっても「スピード」と「ストライド」と「ピッチ」の相関関係が異なっており、8800m地点ではスピードとピッチの相関が高くなり、また膝関節を固定気味にして走っていることを報告し、まさに状況に応じて切り替えている「適応制御」の可能性を指摘しました。