「食欲」は何によって決まるのですか?

 1994年に発見された「レプチン」というホルモンは、 脂肪細胞から分泌されて脳内の摂食中枢を刺激します。強力な飽食シグナルを伝達し、交感神経活動亢進によるエネルギー消費増大をもたらすもので、肥満や体重増加に関連するものとして注目されています。
 正常な状態では、摂食中枢のレプチン受容体が刺激を受け「満腹感」を発生するのですが、肥満状態になるとレプチン受容体の「抵抗性」が亢進して摂食行動が抑制されなくなります。自然科学研究機構・基礎生物学研究所の研究では「PTPRJ」という酵素が働くとレプチン抵抗性が増大して肥満マウスになるのですが、PTPRJを欠損したマウスでは、食後の血糖値の上昇がおだやかで、インスリンの働きが増大し、正常なマウスと比べ体長は同じだが、食餌摂食量が少なく、低体重で脂肪量が少ないことを報告しています。膵臓から分泌されるインスリンは、食後に上昇した血糖値を低下させる働きがあり、「糖毒性(血糖値の異常な上昇により血管内タンパク質の損傷を招く)」を抑制すると考えられており、1型糖尿病(後天性ではないタイプ)ではインスリン注射などが必要となります。
 また食品には、グリセミックインデックス(GI)という食物をグルコース(ブドウ糖)に変換する速度の指標があります。高GI食品(容易に消化される炭水化物や人工甘味料の多いもの)と低GI食品(タンパク質や食物繊維を多く含むもの)との比較では、高GI食品の過剰摂取が長期的に体脂肪の増加を招くことが指摘されています。また前回紹介した「超加工食品」の過剰摂取も食欲亢進を招きます。
 つまり「正常な食事内容」を逸脱したケースが継続すると「食欲が異常亢進」して脂肪の増加による体重増を招くようなのです。食物繊維を多く含む「精進料理」が健康に良いことやアスリートの食事では「和食メニュー」が薦められていること(ただし摂取カロリー総量は普通の人の2倍以上ですが・・)もこのことと関連しているようです。

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