「体調管理や健康維持のために運動したいのですがどの位やれば良いのですか?」という質問をよく受けます。
実は個々人の遺伝子検査をしないと「各自の適切な運動の内容と時間」は決定できないことが知られています。グラスゴー大学のギル先生は、食事由来の血中 ”カイロミクロン(脂質)” が前日の90分のウォーキングで同じ食事内容でも朝食4時間後に減少していることを指摘しています。バーミンガム大学のティモンズ先生は、トレーニングにより有酸素的能力が劇的に改善される人が15%であるのに対してほとんど効果の出ない人が20%いることを指摘しています(NHK「フィットネスの最新科学~運動は本当に効果的?~」2012年放映)。そして20秒間全力ペダリング+10秒休憩を3セット、週4回実施するという高強度短時間運動(HIT)が糖代謝改善(糖尿病への対応)と有酸素能力向上に効果的であることを指摘しています。日本では立命館大学の田畑先生が、20秒間高強度運動+10秒休憩を6~8セット(3~4分間)を週2回実施することを推奨しています(田畑泉、世界標準の科学的トレーニング、講談社、2022年)。
ただどちらのトレーニングも20秒間とはいえ高強度運動なので「ちょこっと!」できるわけではありません。
米・メイヨークリニックのレヴァイン先生は「活動性熱生産」によるカロリー消費に「運動性(EAT)」と「非運動性(NEAT)」の2種類があり、同じ体格の人でも2000Kcalの差が生ずることを指摘します(J.レヴァイン、GET UP!~座りっぱなしが死を招く、角川書店、2016年)。つまり座りっぱなしの事務員と常に立ち居振舞っている店員とではNEATの値が異なること、そして仕事のNEATと余暇のNEATが影響していることを示唆します(ちなみに1時間のランニングは500Kcal程度)。(続く)